4/06/2009

展覧会を終えて



















 無事、会期を終えました。

たくさんの方達と、母の刺繍、私の人形についてお話させていただいた、大変貴重で忘れがたい一週間でした。


最終日に来られたお客さまが、一体の人形の前に立たれ、「こんな子がいたら、病院なんていらない!!」と何度もおっしゃって下さったのが、本当に、涙が出そうになりました。


私の作った人形が、作っている私が独りよがりにそう感じていただけではなく、他の誰かを癒すものを持っていたことが、たまらなく嬉しく、心に響いたのです・・・。


母の刺繍には、本当に素晴らしい賛辞を たくさんたくさんいただきました。
随分と目が悪くなった母ですが、これからも出来る限り、少しずつでも糸での表現を続けようという気持ちを、強くしたようです。


最後に、ご来場下さった方々、そしてサポートしてくれた家族に、本当に感謝いたします。 

来て下さった方達にお配りした、カードの言葉を記して置きます。


 私にとって母は、とても不器用な人です。

刺したいという題材に向かい、それを軌道に乗せるまで
どれだけ思い悩み  糸をほどき こだわることか・・・。

その気持ちを抱えながら 日々を送り、 その後 それがほんの些細な部分でも 
心に描くものが刺せた時は
まるで子供のように喜びます。

新しいやり方を試みても
結局は糸と針のみの 地道な表現に戻り 
いつも 一番苦しい道を選択しているように思えます。

そんな母を見ていると、
もっと気持ちを切り替えて 楽になればいいのに・・・と思わずにはいられないのですが・・・。

けれど その苦しみの末に出来上がったものには
不思議と 苦難の色ではなく 
それを乗り越えたからこその 景色が広がります。


  いっぽう 楽天的な私といえば
重労働ともいえる 粘土の鋳込みや高温での窯入れ
集中力の必要なアイカット・顔描き、 衣装・革靴・鬘作りなど
様々な技術を必要とする (だからこそ楽しい!)人形作りに
自分なりの全てを込めて 精一杯向き合っています。

人形の作業が進む段階で 
いつも必ず 人形の表情が急に いきいきする瞬間があります。
嬉しそうににっこりする子もいれば、はにかむ子
おどけたり、ツンとしたり・・・
そんな 個々の隠れていたキャラクターが現れた時、
それが 私にとって 一番嬉しい瞬間です。

だから 私の人形は皆
私のつぶやき 心からの笑顔を感じながら 形になって行くのでしょう。

そんなふうに 「つくる」 という日々を送れることが
何よりの喜びです。

そしてそれはもちろん 母も同じに違いありません。
                          2009年 3月